戸惑いを乗り越えて

  桜の花びらが正門内側のサークルを舞い踊り、楽しげに春の訪れを告げています。子どもたちが今ここにいたら、風に吹かれる花を追いかけて戯れ、一緒にダンスをしていたのではないか、そんな姿を思い浮かべています。

  ご入学、そしてご進級おめでとうございます。例年ならば直接にお届けできるお祝いが今はかないませんが、子どもたちはそれぞれの場所で新しい一歩を踏み出したことでしょう。感染症の拡大防止のために3月初めから休校要請、そして外出自粛と我慢を強いられる日々、ご家族の皆様も大変な毎日をお過ごしと思います。生活のリズムがすっかり変わり、振り返ればこれまでの毎日が文字通りに「有り難い」ものであったことを実感します。皆が戸惑いの中にありますが、きっと乗り越えられます。止まない雨はありません。

  この号がお手元に届く次の日曜日が主イエスのご復活をお祝いする日です。しかし今年は日本をはじめ各地のカトリック教会では新型ウイルスの感染拡大防止のため、3月からは公開ミサが行われていません。各家庭でそれぞれに、戸惑いを乗り越えて祈りを捧げています。教皇フランシスコもバチカンにあって世界のコロナ感染の終息を祈ってくださっています。

「今回のことで、神様は私たちに何を伝えたいのでしょうね」

と、あるメールがおっしゃいました。どんな出来事からも神様のメッセージを感じ取ろうとされる姿勢は、学園が大切にしてきた伝統の一つです。

 自由で便利で快適な暮らしができるよう工夫が続けられた現代社会。慣れてしまった私たちは、思い通りにならないときに簡単に不安と不満を口にしがちです。マスクが足りない、消毒用アルコールがない、遊びに行かれない。「今が良ければ」「私が良ければ」という気持ちが強くなるのは、また買占めや転売、心無い差別をしてしまうことも不安の表れと言えます。世界人口の四割は満足に手洗いできる環境にないとユネスコが伝えています。恵まれている私たちこそ、これ以上の拡大を避ける努力を続けなければなりません。

 最後の晩餐で、主イエスが弟子たちに「この中に私を裏切るものがいる」と語った時、「弟子たちは非常に心を痛めて『主よ、まさか私のことでは』と代わる代わる言い始めた」(マタイ26章)とあります。望ましくないことを不本意ながらしてこなかったかと振り返る弟子たちの謙虚さを思い、気づかないうちにウイルスの運び手になっていないか振り返るのは大切です。

 中庭の欅は、鮮やかな緑の葉を早くも身にまとい始めました。すべてのいのちのつながりを、神様はすでにご用意くださっています。暗いと不平を言うよりも、進んで明かりを灯す私たちであるように、子どもたちとともに、祈りのうちに歩んでまいりましょう。

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